情報商材屋で働いた話(4) 先輩
俺が入社した情報商材販売会社には先輩スタッフがいた。
法人化する前は、ヤンキージャージ社長とそのスタッフ、アキラさんの二人でコタツで作業していたそうだ。
アキラさんは、社長とは違ってマトモな人だった。
大学も出ていたし、会社組織で働いた経験もあった。
「アキラさんはどうしてまたこの仕事をすることになったんですか?」
「僕はジロウ。。。いえ。。。社長とは同郷で幼なじみなんですよ。」
ヤンキージャージの本名はジロウっていうのか。また古風な名前だな。
会社案内やHPにはいかにもDQNが好きそうなキラキラネームを使っていたのに。
そうか、ジロウか。
アキラさんは見た目だけでなく、仕事もぶりもキチンとして丁寧だった。
情報商材の中身はジロウが考え、販売方法は師匠である〇〇〇〇先生の丸パクリ、
そして、それを実際に運用しているのがアキラさんという構図だ。
アキラさんは顧客との連絡や売り上げ管理のいっさいを引き受けていた。
しかし、今月いっぱいでやめて故郷へ帰り、家業を継ぐそうだ。
「ジロウは長い間大変だったんです。僕は進学して、就職して、東京に来ましたけど、
ジロウは高校中退して、専門学校もクビになって、アルバイトを色々やってました。
ずっと食えなくて貧乏でした。何をやってもうまくいかず、ずっと可哀相でした。僕はジロウを助けたい一心で手伝うことにしたんです」
いい友達だなぁ。しかし、社長はそんな友達に対してヒドイ態度をとっている。
いくら感謝してもし足りない恩人に対して「お前はホント使えないな」などと毒づく。
威張り散らすのは自信のない証拠とはいえ、見苦しいにもほどがある。
アキラさんは出来た人らしく、理不尽な事を言われても、黙って従っている。
社長が何か言うと「承知しました」って、「家政婦のミタ」かよ???(笑)
何か弱みでも握られているのだろうか?
「アキラさんの作ったシステム素晴らしいですね。引き継ぎも論理的でわかりやすくて助かります」
「そ、そうですか?そんな。。。こちらこそ、億男さんのようなエリートとお仕事させて頂けて光栄です。こんな楽しいのは初めてです。」
実際のところ、アキラさんが退職してしまったら、この会社は回らない気がした。
アキラさんは24時間いつでも社長からの連絡で動き、休みなく働いていた。
俺の他にあと二人、雇うと言っていたが、アキラさんの穴は埋まらないだろう。
普通の人間は、そんな条件では働かないし、労働基準法違反だ。
社長が24時間連絡してくるなんて、ブラック企業以外のなにものでもない。
これはナントカ手を打たねば。
情報商材販売会社の人間関係が分かったところで、1日目は終わった。
2日目に衝撃の事実が判明することを、この時の俺はまだ知らなかった。