情報商材屋で働いた話(19) 解雇
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俺が深い眠りについていた深夜2時。
携帯が鳴った。
しまった、電源を切り忘れてた。
こんな夜中に連絡してくるやつはひとりしかいない。
俺が勤務する情報商材屋の社長、ジロウだ。
あいつ、またかよ。。。
ジロウはこうして24時間おかまいなしにメッセージを送ってくる。
携帯だけでなく、PCに登録している数種類のメッセンジャーに、バラバラに送ってくるのだ。
それを全部見て返答しなければならない、というルールが俺の入社前に出来上がっていた。
先輩社員のアキラさんがそうしていたからだ。
。。。ったく、ふざけんな。
俺はメッセージをみることはしないで、携帯の電源を切ってベッドに戻った。
1日24時間勤務とかありえないだろ???
社長のジロウはいつ寝ているんだろうか。
小さなサルみたいな体ですごいバイタリティだな。
ヤツの場合、チビ、ブサイク、貧乏、低学歴、いろいろなコンプレックスを跳ね返そうと仕事に打ち込んでいるところがある。
情報商材屋が儲かるのは事実だ。
しかし、寝てても毎日100万円というワケではない。
稼ぎつづけるためには、新しい企画や商品をだして、集客もしなければならない。
悪いが、俺は寝かせてもらう。
アキラさんのように、飛び起きて返信なんかしない。
夜中の2時に返信しても、明日の朝に返信しても、なんの違いもない。
なんだったら、返信しなくてもいいような内容だったりする。
チビザル社長は、何をそんなにカリカリしてるんだか。
そんなんじゃ、すぐに東大クンや新入社員に逃げられちまうぞ。
零細企業でも、法人として人を雇う以上は最低限のルールは守らないと。
ぐっすり眠ったあと、社長からのメッセージを確認すると、「今日の出社は不要」とある。
ヤッターーー休みだーーー
と思ったらそうではなく、「自宅で作業しろ」とのことだった。
それでもいい。
情報商材屋の仕事は、PC1台あればどこでもできる。
今の俺の担当業務は3か月後に開催予定の海外セミナーの手配だ。
メッセンジャーを使って現地のコーディネーターに連絡したり、エクセルでタイムスケジュールをくめばいい。
さっさと済ませて、映画でも観に行こう。
そう段取りを考えたところへヤンキージャージ社長ジロウからメッセンジャーが来た。
「とりあえず、しばらく出社は不要です。」
はぁ?????
どういうことだ???
会社に何かあったのか???
もうつぶれた???
5日前に見た会社の口座には5000万円ちかくあったし、大きな支払予定もないし、借り入れも手形もないから、向こう1年くらいは倒産しないはずだ。
ということは???
クビ?????
まだ8日しか働いていないのに???
そうか、昨日の取材か!!!
先輩社員が俺をホメただけでブチ切れてた社長が、マスコミ連中にコケにされた。
かなり怒ってたもんな。。。
ま、それならそれでいいけどね。
生活のためではなく、好奇心で入社しただけの会社。
情報商材ビジネスがどういうものかわかったし、目的果たした。
心身共に限界だったし、辞めるのは願ったリ叶ったりだ。
俺はジロウにメッセージを打つ。
「了解です」
いやいや、ちがった。
消して、打ち直す。
「承知しました」
先輩アキラさんの口癖だ。
おかしくて笑いをこらえながら送信ボタンを押した。
俺、クビになっちゃったよーーー www
最高のオチに一人で爆笑した。