OKO 億を稼ぐ男

億を稼ぐ男の考え方

情報商材屋で働いた話(14) 嫉妬

「なに?」

 

ノー天気な顔をしているヤンキージャージ社長ジロウ。

 

俺はこの会社で行われている数々の法令違反についてジロウに警告することにした。

 

「この書類を見て下さい。」

 

「あー、これねー。気がついちゃった?」

 

「はい。」

 

まず、俺はジロウが師匠からパクった情報商材の写真を見せた。

 

「マズイ?」

 

「マズイっす。著作権に抵触します。差し替えましょう。」

 

「そっかあ。わかった。一時、販売停止にするから、億男さん差し替えといてよ。」

 

「わかりました」

 

ものわかりよく、すんなり応じたので拍子抜けした。

 

「社長、他にもいくつかあります。」

 

「ん?」

 

「法人化したことですし、これからはコンプライアンス(法令遵守)を強化していきましょう」

 

「え?ナニ?昆布ライス?」

 

昆布ライスじゃねーよ!!

 

そんなもん誰が食うんだよ!!

 

「税金は払った方がいいです。銀行融資や補助金を引っ張ってくるためにもです」

 

「ファーッ!億男さんはすげーな!頭イイし、やっぱエリートは違うな」

 

すると、階下から上がってきた先輩社員のアキラさんが口をはさんだ。

 

「そうなんですよ!億男さん、すごいですよね!僕も本当に勉強になってます」

 

その瞬間、ジロウの顔色がサッと変わった。

 

「なんだよ?テメーは?口はさむんじゃねぇ!」

 

「す、すみません」

 

アキラさんは小さくなって謝った。

 

ジロウはアキラさんをにらみつけると、不機嫌な顔でプイと外へ出て行ってしまった。

 

幼なじみで、社会的にも学歴的にも見た目的にも、どう見てもアキラさんの方が数段格上なのに、この関係性はなんなんだ???

 

入社2日目の通帳記入の時にアキラさんへの給料支払いを見たが、こづかい銭程度で驚いた記憶がある。

 

アキラさん本人にジロウへの服従の理由を尋ねたところ、同情心からだと答えていたが、本当にそれだけだろうか???

 

ジロウが外へ出たのを確かめて、俺はアキラさんに話しかけた。

 

「アキラさんは本当によくやっているのに、報酬少ないですよね?」

 

「。。。。。。。」

 

「すみません、記帳の時に見えちゃいました」

 

「はい。そうなんです、少なすぎですよね?」

 

「驚きました。アキラさんなら少なくともあの10倍はもらうべきです。」

 

「僕も。。。実は僕もおかしいと思っていたんです!」

 

「いいですか、アキラさん。この会社があるのは半分はアキラさんの力です。」

 

「そうなんです。」

 

「株式の所有はどうなっていますか?」

 

「100%ジロウが持っています。」

 

「それはオカシイ。アキラさんにも権利があります。」

 

「やっぱり。。。そうですよね?」

 

「どうして要求しないんですか?」

 

「それは。。。」

 

アキラさんは黙ってしまった。

 

俺はジロウのセミナーに来る、気の弱い、お人好し連中を思い出した。

 

そうか、日本は豊かな国で、こうした善良な人たちに支えられているんだ。

 

諸外国の食い物にされるわけだな。

 

「アキラさん、俺が社長に交渉しますよ。」

 

「億男さん。。。でも、それは。。。」

 

「いや、言わなきゃダメです。俺も今の24時間指示を受ける体制はムリなんで、交渉しましょう」

 

そこへ、さきほどプイと出て行ったジロウが戻ってきた。

 

アキラさんと俺が二人で話し込んでいた様子を目にとめ、鬼の形相でにらんでいる。

 

しかし、俺はひるまない。

 

俺は自分の要求は通す男だ。

 

女を口説くのは苦手だが、年俸交渉の類は得意だ。

 

「社長、ちょっといいですか?」

 

ジロウは顔を真っ赤にして叫んだ。

 

「億男さんとアキラは二人で結託して、俺の敵になる!!」

 

。。。。。は?

 

俺はキョトンとしてしまった。

 

こどもか?

 

仲間外れにされたと思っているのか?

 

そうだ、コイツはこどもだった。

 

毎日、毎日、たまごサンドとコーヒー牛乳を昼ごはんにしているコドモ。

 

お子さまランチ野郎だ。

 

俺はあまりのあほらしさに開いた口がふさがらなかった。

 

こりゃ、ダメだ。

 

本当に一刻もはやくズラかりたい。

 

男の嫉妬は面倒だ。

 

幼稚なやつは特に。

 

嫌な予感がした。